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社内AI導入の成否を分ける4つの分岐点|主要調査から

「生成AIを導入したのに成果が見えない」という声が増えています。実際、エージェント型AIを本番稼働させている企業はわずか11%にとどまり、Gartnerは、エージェント型AIプロジェクトの40%以上が2027年末までに中止されると予測しています[1][2]。一方で、AI導入から大きな成果を上げる企業も確実に存在します。その違いはどこにあるのでしょうか。Deloitte、Gartner、McKinseyが2025〜2026年に公表した最新調査から、成功企業と失敗企業の差を左右しやすい4つの分岐点を整理します。

分岐点1:既存プロセスへのAI追加 vs 業務フロー全体の再設計

37%が「貼り付け」で止まっている

多くの企業がAI導入で陥る最初の罠は、既存の業務プロセスにAIを「貼り付ける」だけで終わってしまうことです。調査によれば、37%の組織が既存プロセスをほとんど変えない表層的なAI活用にとどまっています[3]。一方で、30%は主要プロセスの再設計に取り組み、34%は製品・プロセス・事業モデルそのものを深く変革する段階に入っています[3]。この違いは、AIを単なる効率化ツールとして扱うか、事業や業務の変革手段として扱うかという、導入姿勢の差を表しています。

既存プロセスへのAI追加とは、たとえば「メールの下書きをAIに任せる」「議事録作成を自動化する」といった単一タスクの効率化です。確かに担当者の手間は減りますが、業務の流れそのものは変わっていません。一方、業務フロー全体の再設計では、AIが複数の処理を連携して実行し、人は判断、承認、例外対応に集中する構造へと転換します。

「人間用の道」をそのまま舗装しない

AI導入で見落とされがちなのは、人間向けに設計された手順を、そのままAIに渡してしまうことです[2]。AIの活用範囲、判断基準、人が担う例外処理を含めて、業務フローを再設計する必要があります。

実際、McKinseyの調査ではワークフロー再設計が、生成AIによるEBIT(利払い・税引き前利益)影響を得るための最も影響の大きい要素とされています[4]。業務の「速さ」だけでなく、業務の「設計」そのものを変えることが、AI投資の成否を分ける第一の分岐点です。

分岐点2:生産性向上で止まる vs 事業価値につなげる

効率化と事業変革のギャップ

Deloitteの調査では、AIは生産性・効率性の向上に活用される一方、事業そのものを深く変革している企業は34%にとどまっています[3]。効率化の成果を、収益成長や新たな顧客価値へつなげるには、業務設計の見直しが必要です。

生産性向上と収益成長は、つながってはいるものの、実現までの道筋は異なります。生産性向上は既存業務の処理速度を上げることで達成されますが、収益成長につなげるには、効率化で生まれた余力を、提案品質の向上、新たな顧客価値の提供、市場投入スピードの改善といった活動に再配分する設計が重要です。

タスク自動化と業務再設計の決定的な違い

よくある導入パターンは「ある業務の一部をAIに任せる」というものです。データ集計、レポート作成、メール対応——いずれも単体では有用ですが、これらは「タスク自動化」であり、業務の流れそのものは変わっていません。顧客へのアウトプットや提案の質が変わらなければ、収益には直結しにくいのです。

McKinseyの調査でも、生成AIによるEBITへの影響を得るうえで、ワークフローの再設計は調査対象となった要素の中で最も大きな影響を持つ要因とされています[4]。収益成長につなげるには、単に処理を速くするだけでなく、顧客への提案内容、提供スピード、対応品質といったアウトプットを変える必要があります。「速くなった」から「提供できるものが増えた」への転換が、第二の分岐点です。

分岐点3:現場任せ vs 経営層が設計に関与

ツール配布で終わる企業の共通点

AIツールを利用できる従業員の範囲は、2025年に大きく拡大しました[3]。しかし、アクセスの拡大が、そのまま日常業務への定着を意味するわけではありません。ツールを提供しても、業務設計と運用体制が変わらなければ使われません。この問題の根本には、「AIは技術部門の課題」という誤解があります。

成功企業と失敗企業を分ける第三の分岐点は、経営層の関与です。AIを事業価値につなげるには、技術部門だけに任せるのではなく、経営層が優先業務、投資基準、リスク許容度を定める必要があります。AIを事業価値につなげるには、技術部門だけに任せるのではなく、経営層が優先業務、投資基準、リスク許容度を定める必要があります。ここで言うガバナンスとは、規制対応だけではありません。「どの業務にどのAIをどこまで使うか」の設計判断そのものです。

使われるAIと使われないAIの差

AIが定着しない背景には、ツール性能だけでなく、「いつ・どの業務で・どこまで使うか」が設計されていないという問題があります。業務フロー、手順書、テンプレートの中にAI活用を組み込み、利用者が迷わず適切に使える状態をつくることが重要です。

投資判断、優先順位付け、成果の測定を担う主体が不明確なまま、現場への「AIツール配布」で終えると、AI活用は局所的な効率化にとどまり、全社的な事業価値につながりにくくなります。経営課題として設計判断を行うか否かが、第三の分岐点です。

分岐点4:パイロットで止まる vs 本番展開への壁を越える

本番稼働わずか11%の現実

エージェント型AIは多くの企業で検証・パイロット段階にあり、本番稼働まで到達している企業は11%にとどまります[2]。さらに厳しい予測もあります。Gartnerは、エージェント型AIプロジェクトの40%以上が2027年末までに中止されると予測しています[1]。

この数字が示しているのは、この数字は、「試してみる」段階から、本番環境で継続的に活用する段階への移行に、多くの企業が課題を抱えていることを示しています。技術的な可能性と、企業での実装能力の間には、まだ大きなギャップが存在します。

実装を阻む三つの壁

本番展開を阻む代表的な課題を、ここでは三つに整理します。一に、AIエージェントが必要な情報を取得し、業務システム上で処理を実行できるアーキテクチャを整えられていないことです[2]。AIエージェントが必要な情報にアクセスし、業務システム上で処理を実行できなければ、活用範囲は限定されます。

第二に、AIが参照するデータの検索可能性(48%が課題と認識)と再利用性(47%が課題と認識)の低さです。AIが大量のデータにアクセスできても、文書の正本、更新状況、権限、検索性が整っていなければ、正確で根拠のある回答を安定して得ることは難しくなります。

第三に、自律システムに対するガバナンス体制の未整備です。AIが自律的に判断し行動する場合、その判断の透明性、責任の所在、リスク管理の仕組みを事前に設計する必要があります。

本番展開を目指すなら、システム連携、データ整備、ガバナンス体制を、パイロット後ではなく導入初期から設計しておく必要があります。パイロットで満足せず、本番展開への道筋を最初から設計するか否かが、第四の分岐点です。

さいごに

AI導入で成果を出せるかどうかは、AIの性能や予算だけでは決まりません。4つの分岐点——業務フローの再設計、事業価値への接続、経営層の設計関与、本番展開への壁の克服——のいずれかで止まっているかどうかです。

調査データが示すのは、AI活用を本番展開や事業変革まで進められている企業が、まだ限られるという現実です[1][2][3][4]。しかしその差は、「何を変えたか」の設計判断に集約されます。AIツールの追加ではなく、業務そのものを設計し直すこと。タスクの効率化ではなく、顧客への価値提供を変えること。現場任せではなく、経営課題として取り組むこと。そしてパイロットで終わらせず、本番展開の壁を越えること。

いま企業に求められているのは、「何を自動化するか」だけでなく、「どう業務を設計し直すか」を問うことです。その問いを持てるかどうかが、AI投資の成否を分ける出発点になります。

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出典

この記事を書いた人

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m-koshihara

ソリューションサービス事業部

5年以上Webアプリ開発に従事したのち、2023年よりSGCの導入を担当。法人向け生成AI活用について、導入や業務活用の視点から発信しています。

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