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生成AIで成果が出ない理由|業務効率化につながる選び方と進め方

生成AIを導入したものの、期待した成果が出ないと感じている企業は少なくありません。実際、Gartnerは2027年末までにエージェント型AIプロジェクトの40%超が中止されると予測しています[1]。Deloitteの調査では、エージェント型AIについて、38%の組織がパイロット段階にある一方、本番環境で活用している組織は11%にとどまっています[2]。

しかし、問題は技術そのものではありません。成果が出ない背景には、既存の非効率なプロセスを見直さないままAIを適用してしまうことがあります[2]。また、効果測定や横展開が難しい業務から着手すると、投資対効果を示しにくくなるおそれがあります。本記事では、なぜ生成AI導入が失敗するのか、そして効果を出すために必要な業務の選び方と進め方を解説します。

なお、本記事では、文章作成や要約、社内問い合わせ対応などに使う生成AIチャットに加え、複数の手順を実行するエージェント型AIや業務自動化ワークフローも含めて、企業におけるAI活用を扱います。

なぜ生成AI導入が成果につながらないのか

「壊れたプロセス」をそのまま自動化している

生成AI導入でつまずきやすい要因の一つは、既存の非効率なプロセスをそのままAIで自動化しようとすることです。Deloitteは、既存の人間向けプロセスを再設計しないままAIエージェントを適用することが、導入の壁になり得ると指摘しています[2]。

例えば、承認フローが複雑で時間がかかる稟議プロセスをAIで自動化しても、根本的な問題は解決しません。むしろ、非効率なプロセスがAIによって高速化されるだけで、本質的な改善にはつながらないのです。生成AIを全社展開するには、現場の従業員を巻き込み、実際の業務に即してプロセスや役割を再設計することが重要です[2]。

経営層と現場の認識ギャップ

もう一つの大きな問題は、経営層と従業員の間に存在する認識のギャップです。Accentureの調査では、従業員の82%が生成AI技術を理解していると考え、94%が必要なスキルを習得できると回答しています。一方で、雇用主の63%は、スキルギャップを事業変革における大きな障壁と捉えています[3]。

この認識の差を放置すると、導入方針への納得感や現場の活用意欲が低下するおそれがあります。

効果が出やすい業務の3条件

定型性:反復的でルールベースの業務

生成AIで効果が出やすい業務の第一の条件は、定型性です。つまり、反復的で明確なルールに基づいて処理できる業務が適しています。

実際の成功事例として、Deloitte トーマツは、内部監査・J-SOX評価の対象案件20件でAIエージェントを検証し、証憑評価や調書作成を含む業務工数を50%以上削減したと公表しています[4]。この事例は、評価観点や必要書類を一定程度整理できる業務にAIエージェントを適用した例といえます。

ただし、判断基準が完全に固定され、例外処理も少ない業務では、生成AIよりもワークフローシステムやRPAが適する場合があります。生成AIは、文書の要約・分類・下書き作成、社内規程の参照、問い合わせ対応など、文章や社内情報を扱いながら判断支援が必要な業務で活用しやすい傾向があります。

測定可能性:効果を定量的に評価できる業務

第二の条件は、測定可能性です。効果を定量的に測定できなければ、AI導入の成否を判断できません。

処理時間、エラー率、コスト、従業員満足度など、明確な指標で測定できる業務を選ぶべきです。Accentureの調査では、データ・技術・人材を組み合わせて活用する組織では、最大11%の生産性プレミアムが見込まれる一方、人を中心に据えずデータと技術のみに焦点を当てた場合は4%にとどまるとされています[5]。AI活用においても、技術導入と人材・業務設計を切り離さない視点が重要です。この差を認識するためにも、測定可能な業務から始めることが重要です。

スケール性:組織全体に展開可能な業務

第三の条件は、スケール性です。小規模な部門だけで使える業務ではなく、組織全体に展開しやすい業務を選ぶことで、投資対効果を高めやすくなります。

全社展開を見据える場合は、対象部門の拡大、権限管理、利用ログの確認、コスト管理までを初期段階から設計しておくことが重要です。

業務の選び方:失敗を避けるステップ

ステップ1:業務プロセスの可視化と構造分析

まず、現在の業務プロセスを可視化し、構造的な問題を特定します。「壊れたプロセス」をそのまま自動化しないよう、以下を確認してください。

  • 業務の流れに無駄な承認や待機時間がないか
  • 同じ情報を複数の場所に入力していないか
  • 属人化している業務や暗黙知に依存している部分はないか

業務の可視化によって、AI導入の前に解決すべき構造的な問題が明らかになります。これを怠ると、非効率なプロセスがAIで高速化されるだけで、本質的な改善にはつながりません。

ステップ2:3条件による評価と優先順位付け

次に、先ほど説明した3条件(定型性・測定可能性・スケール性)で業務を評価し、優先順位をつけます。

例えば、内部監査、経費精算、請求書処理、社内問い合わせ対応などは、対象範囲を適切に切り出せれば、優先的に検討しやすい業務です。ただし、例外処理の多さや基幹システムとの連携要件を確認したうえで、AIに任せる範囲と、人が最終確認する範囲を定める必要があります。一方、戦略立案やクリエイティブ企画のように、判断基準や正解が一律ではない業務では、最終判断を人が担う前提で、情報収集、論点整理、たたき台作成などの支援用途から始めるのが現実的です。

高インパクト(効果が大きい)かつ高実現可能性(導入しやすい)の業務から着手することで、早期に成果を出し、組織全体の信頼を得ることができます。また、効果測定のためのKPI設定も忘れてはいけません。処理時間の削減率、エラー発生率の低下、コスト削減額など、具体的な数値目標を設定することで、導入効果を客観的に評価できます。

導入後の進め方と効果測定

小規模パイロットで素早く試行錯誤する

業務を選定したら、対象部門と対象業務を限定した小規模なパイロットを実施します。利用頻度、処理時間、修正率、差し戻し率、回答の正確性、根拠の確認しやすさ、利用者の評価などを定期的に確認します。パイロットの規模や期間は、対象業務の複雑さや社内のセキュリティ・承認プロセスに応じて設計してください。

最初から全社展開や完璧な設計を目指すのではなく、小規模な対象業務で検証し、改善を重ねながら展開範囲を広げる進め方が現実的です。

組織変革とセットで進める

AIプロジェクトを全社展開するには、ITオペレーティングモデルの見直しも重要です。Deloitteの調査では、回答したITリーダーのうち、大きなオペレーティングモデルの変更が進行していないと答えたのは1%にとどまりました[6]。

ガバナンス・セキュリティルールの策定、従業員トレーニング、全社展開計画の策定を並行して進めてください。技術だけに焦点を当てるのではなく、データ・技術・人材を組み合わせたアプローチを採用することで、より大きな成果を得られます[5]。

全社展開を見据える場合は、社内文書を活用した検索・回答生成、業務手順の標準化、権限・利用ログ・コストの管理機能を一体で提供する環境を検討することも有効です。

さいごに

生成AIで成果が出にくい背景には、技術選定だけでは解決できない、業務選定、効果測定、組織変革、ガバナンス設計の課題があります。2027年末までにエージェント型AIプロジェクトの40%超が中止されると予測される中、成果を出すためには、業務の構造分析を先行させ、効果を測定しやすい業務から始めるとともに、事業価値、ガバナンス、全社展開の方法までを一体で設計することが重要です。

技術選定より業務分析を優先し、小規模パイロットで素早く試行錯誤し、組織変革とセットで進めることが重要です。まずは自社の業務プロセスを可視化し、「壊れたプロセス」を特定することから始めてください。そして、定型性・測定可能性・スケール性の3条件を満たす業務を選定し、従業員を巻き込んで業務再設計を行うことで、生成AIの真の価値を引き出すことができます。

全社展開を見据えた生成AI活用では、社内文書の検索・回答生成、業務手順の標準化、権限管理、利用状況・コストの可視化を統合的に提供する環境が重要です。Smart Generative Chatでは、これらの機能を一つの環境で支援しています。

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業務選定と並行して、AI活用の標準化を進める方法については「生成AIに「経験を積ませる」3層設計|RAG・シナリオ・プロンプトで社内AI活用を加速する」や「社内AIの使いこなし格差をなくす|シナリオとプロンプトで全社員を戦力化する」をご覧ください。

出典

この記事を書いた人

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m-koshihara

ソリューションサービス事業部

5年以上Webアプリ開発に従事したのち、2023年よりSGCの導入を担当。法人向け生成AI活用について、導入や業務活用の視点から発信しています。

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