1. TOP
  2. お役立ちコンテンツ
  3. お知らせの記事一覧
  4. 生成AI利用は拡大|社内データ活用基盤の整備率は4か国で最低

生成AI利用は拡大|社内データ活用基盤の整備率は4か国で最低

社内で生成AIを使う社員は増えた。それなのに業務の進め方は変わらず、投資に見合う効果を説明できない——そう感じる企業もあるのではないでしょうか。実際、白書に掲載された調査では、個人の生成AI利用経験率は58.8%、企業の業務利用率は86.4%に達しています(両者は対象も設問も異なる調査の数字です)。普及の「量」だけを見れば、日本でも生成AIは広く浸透したように映ります[1]。ところが国際比較で見ると、「使う人」は増えても、組織として成果に変える基盤づくりは追いついていません。組織的な取組や社内データ活用基盤に関する指標で、日本の課題が目立ちます。本記事では総務省『令和8年版 情報通信白書』を中心に、関連調査も交えて読み解きます。

日本でも生成AIの利用は広がった

まず、普及の「量」がどこまで広がったかを確認しましょう。なお、白書の企業調査は従業員10名以上でデジタル化に着手済みの企業の管理職以上、個人調査は15〜69歳のネット利用者が対象で、以下は日本全体ではなく調査対象の回答割合です。

個人利用は幅広い世代に広がった

日本の生成AI利用経験率は58.8%に達しました[1]。ただしこの58.8%には、2025年度から新たに15〜19歳が加わったため、前年度の全体値とは単純に比較できません。一方、今回調査の対象を20〜69歳に限ると52.2%で、前年度の26.7%からほぼ倍増しています[1]。若い世代ほど利用率は高く、15〜19歳では91.7%、20代で78.2%に上る一方、60代は33.5%にとどまります[1]。

企業の業務利用も8割を超えた

企業でも普及は鮮明です。調査対象企業のうち、何らかの業務で生成AIを利用している企業は86.4%でした[1]。活用方針を「積極的に活用する」「領域を限定して活用する」と答えた企業の合計も68.9%と、前年度の49.7%から大きく伸びています[1]。大企業では74.0%、中小企業では58.1%と差はありますが、規模を問わず広がっています[1]。

しかし、組織的な取組や社内データ活用に課題

ところが国際比較で読むと、普及の裏に大きな差が浮かび上がります。

「組織的な取組はない」が4か国で最も高い

調査対象の日本企業で「組織的な取組はない」と答えた割合は27.0%でした。これは日本・米国・ドイツ・中国の4か国比較で最も高く、米国の1.4%、ドイツの4.9%、中国の2.6%と比べて突出しています[1]。業務利用率86.4%とは、設問も回答対象も異なるため単純には比較できません。一部門で生成AIを使っていても、業務変革に向けた組織的な取組には至っていないケースはあり得ます。実際、組織的な取組の形態としては各部署での業務の最適化や価値向上が32.4%と最も多く、全社横断的な事業変革やイノベーションに取り組んでいると回答した割合は21.5%でした[1]。

社内データを学習・参照に使う環境の整備割合が4か国で最も低い

さらに象徴的なのが、活用環境の整備です。「生成AIに社内データを学習させる、または参照可能なデータベースを構築する」と答えた日本企業は24.5%で、4か国で最も低い水準でした。米国57.2%、ドイツ54.4%、中国73.0%と、他の3か国はいずれも5割を超えています[1]。この数字が示すのは、社内データの有無ではなく、学習・参照に活用するための環境整備の割合です。日本の中小企業では、この環境を整備している割合は17.7%にとどまります[1]。

なぜ「量」が「成果」につながりにくいのか

組織基盤や成果実感が追いついていない傾向は、複数の調査から見えてきます。

業務プロセスの変更は限定的にとどまる

利用の中身を見ると、偏りは明らかです。最も活用が進むのは「議事録・メール作成補助」で、この業務で生成AIを活用していると回答した人のうち、効果を感じる割合も72.3%と高くなっています[1]。一方で、具体的な業務類型では「業務プロセスがAI中心に変更されている」と答えた割合は5.6〜11.9%にとどまります[1]。個人の作業支援が先行し、業務プロセスの変更は限定的です。生成AIは「個人を速くする道具」にとどまり、「仕事の進め方を変える仕組み」にはなりきれていません。

大企業でも、期待を大きく上回る効果には差がある

あわせて見たいのが、別の調査で示された成果実感です。大企業で生成AIの推進に関与する担当者を対象とする、日本を含む6か国の調査があります(2026年春版)。総務省の白書とは対象も設問も異なりますが、同じ傾向が読み取れます。この調査では、日本の回答者の87%が、所属企業で生成AIを活用・推進していると回答しました[2]。活用・推進中の回答者の64%は期待通り以上の効果があったと答えています。一方、調査回答者全体で「期待を大きく上回る効果」を創出できたという回答は9%で、6か国中最も低い水準でした。米国の38%、英国の32%とは大きな開きがあります[2]。効果が1年以内に表れると見込む回答も日本は41%にとどまり、米国の66%を大きく下回ります[2]。生成AIで得た効果を、従業員への利益還元や顧客への価格還元につなげている回答者の割合も、日本は40%で6か国中最も低い水準でした[2]。これらの数値からは、活用が既存業務の効率化やタスク支援にとどまり、ツール利用の域を出ていない様子がうかがえます。

活用・推進の広がりに比べ、期待を大きく上回る効果の創出では比較対象国との差が残っています。社内固有の規程や過去事例を踏まえる業務では、社内データを参照できない生成AIは情報が不足し、確認や修正の手間が残りがちです。前後の手順や成果指標を見直さなければ、浮いた時間は成果に表れません。

警鐘の先にある「成果に変える」設計

白書は、どこを変えれば成果に届くのかも示しています。

社内データの参照基盤と「AI-Ready」化

白書が効果創出の基盤として挙げているのは、社内データとの連携です。先進企業の多くは、社内システムやデータとAIをつなぎ、自社の業務知識にもとづく回答を引き出せる環境を整えています[1]。国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、AI導入の第一歩はデータを整えてAIが適切に使える状態にする「AI-Ready」化であり、特にAIエージェントではデータの精度と鮮度が重要だと指摘します[1]。有効な手段の一つが社内文書を検索・参照できる仕組み(RAG)です。モデル自体を再学習させるのではなく、回答のたびに関連文書を検索して参照させる方式で、文書を検索・取得する段階から権限に応じたアクセス制御やログ管理を組み合わせれば、情報漏えいのリスクを抑えられます。ただし、リスクをゼロにはできません。

利用ルールの整備と業務プロセスの再設計

もう一つの鍵は、個人任せからの脱却です。白書は、汎用的なAIツールを導入するだけでは、一部の積極的な社員の利用にとどまり、全社的な活用や効果創出に至らない可能性を指摘しています[1]。各自の判断で使う「シャドーAI」は機密情報の流出リスクを高めるため、安全に使える環境と利用ルール・ガイドラインの整備が欠かせません[1]。そのうえで、白書で紹介されている日清食品グループは、部門ごとに対象業務を選び、プロンプトの型化と効果測定を重ねながら全社へ展開しました。その結果、社内の生成AI利用率は7割を超えました。個人任せを脱して全社に浸透させた一例です[1]。

具体的な進め方は、次の順序が現実的です。

  1. 対象業務を一つに絞る:発生頻度が高く作業時間や品質を測りやすい業務を選ぶ。
  2. 導入前の基準値を記録する:作業時間・品質・確認工数を控える。
  3. 期間を区切って試す:同じ指標で効果を確かめる。作業時間だけで見ると確認工数や品質低下を見落としがち。
  4. 継続条件に照らして評価する:「作業時間を一定割合以上削減し品質を維持する」などの条件を試行前に決め、満たさなければ見直すか見送る。
  5. 標準化して広げる:参照データの範囲・入力禁止情報・確認担当とあわせて標準化し、他部署へ展開する。

たとえば経費精算の問い合わせ対応なら、参照先を最新版の規程とFAQに絞り、担当者が回答を確認する運用から始めます。規程との不一致や再問い合わせにかかった時間も記録すると、効果を判断しやすくなります。個人の効率化を業務プロセスの再設計へつなげる——この順序で、効果を確かめないままの展開を防げます。

さいごに

個人の生成AI利用経験率が58.8%に達し、調査対象企業の8割以上が業務で使う時代になりました[1]。しかし、利用が進んだ企業にとって、次の課題は「使うかどうか」から「どう成果につなげるか」へ移っています。4か国比較では、日本は「組織的な取組がない」企業の割合が最も高く、社内データを生成AIに活用する仕組みの整備割合は最も低くなっています[1]。社内データの参照基盤を整え、利用ルールを定め、業務プロセスを設計し直せているか。この差を放置すれば、「使っているのに成果が出ない」状態が常態化しかねません。大切なのは、小さく検証し、結果を業務手順の見直しにつなげられるかどうか。それが、個人の利用を組織の成果に変える分岐点です。Smart Generative Chatでは、社内データと連携した回答生成に加え、部署・ユーザー別の権限管理、利用履歴の記録、利用範囲の設定をまとめて運用できます。個人任せの利用を脱し、組織的な取り組みとして生成AIの活用を定着させたい企業に適した環境を提供します。

出典

この記事を書いた人

Default Author Image

m-koshihara

ソリューションサービス事業部

5年以上Webアプリ開発に従事したのち、2023年よりSGCの導入を担当。法人向け生成AI活用について、導入や業務活用の視点から発信しています。

DXを
「一気に進める」なら
SGC

無料トライアルのご紹介

トライアル

SGCは1週間の無料トライアルをご利用いただけます。
DXの全体像を把握し導入のイメージをつかむためにも、ぜひご利用ください。

サービスに関するお問い合わせ、
資料のご請求はこちらから承っております

資料請求