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プロジェクト管理の属人化はツールを入れても残る|AI活用の進め方

「管理ツールは入れた。それでも、本当の進捗はPMの頭の中にしかない」。こう感じているなら、原因はツール選定だけではないかもしれません。プロジェクト管理ツール「Flagxs」を提供するフラッグス株式会社は、ITプロジェクト経験者235名を対象に、2026年1月21日〜2月3日にインターネット調査を実施しました。ツール導入経験者199名の約9割が何らかの改善を実感した一方、40.7%は属人化が解消されず、65.3%は表計算ソフトへの回帰・併用を経験していました[1]。

では、なぜ進捗は見えないのか。本稿では属人化を、判断の根拠や課題の兆候が担当者の頭の中にあり、周囲が把握できない状態と捉えます。意思決定権限の曖昧さやリソースの偏りは運用・組織設計の課題で、AIだけでは解けません。その前提で、AI活用の筋道を整理します。なお本稿の数値は各調査の回答者に関する結果で、すべてのITプロジェクトに当てはまるとは限りません。

ツールを入れても属人化が消えないという現実

ツール導入で情報共有が進んでも、属人化が残ることがあります。

約9割が何らかの改善を実感。それでも残る属人化

同じ調査では、改善として「課題・タスクの共有がスムーズになった」「情報が一箇所にまとまり、探す手間が減った」が、ともに47.2%で挙がりました。一方、40.7%はツール導入後も属人化が解消されなかったと回答し、36.7%はリソース不足や負荷の偏りも改善されなかったと答えています[1]。

記録が集約されても、意味づけや判断の観点まで共有されるとは限らず、解釈が経験者に偏りがちです。

表計算ソフトへの回帰・併用がみられる現場

さらに象徴的なのが、導入経験者の65.3%が、表計算ソフトに戻るか専用ツールと併用する運用を経験していたことです[1]。専用ツールに一本化しきれない現場が少なくないことを示します。

Excel回帰・併用層では、「炎上した/炎上しかけた」経験率が60.0%と、ツール定着層の30.4%の約2倍でした。ただし調査は、回帰が炎上の原因だとは示していません。両者は関連にとどまります[1]。

属人化の背景にある「立場による見え方の違い」

では、なぜ属人化は残るのか。調査からは、立場によって見えている情報や受け止め方が異なる可能性がうかがえます。こうした差は属人化が生じる背景の一つとなる可能性があります。

PMとエンジニアで32.8ポイント差がある「情報管理の見え方」

フラッグスの調査では「十分に一元管理できている」と答えた割合は、PM47.1%、エンジニア14.3%と、32.8ポイントの差がありました(PM34名・エンジニア28名のため参考値)。「属人化していると感じることがある」と答えた人も、調査回答者全体の77.0%に達します[2]。

フラッグスが2026年4月に公表した第1弾調査では、「誰が何を意思決定するかが明確だった」と答えた人は31.1%にとどまりました(設問・時期が異なる)[3]。一元管理しても、意思決定の所在まで共有できるとは限りません。

大規模プロジェクトの品質課題を示す背景データ

背景情報として、JUASの企業IT動向調査も見ておきます。同調査の設問「システム開発の品質遵守状況」では、500人月以上のプロジェクトに関する回答(n=223)では、品質に「不満」と回答した割合が29.6%でした[4]。

これは背景情報で、属人化の直接の根拠ではありません。

報告を増やすだけでは、進捗は見えにくい

見えないなら報告を増やせばよい——そう考えがちですが、落とし穴があります。会議や資料作成の負担は、すでに広く課題です。

会議・資料作成も負担になっている

会社員や経営者ら300名を対象に2026年5月に実施された調査では、仕事中にムダ・非効率を感じる人が約8割にのぼり、上位に「結論の出ない会議」64.4%、「不要な資料作成」60.5%が並びました。効率を下げる要因の1位は情報共有不足49.7%です[5]。プロジェクト報告に限らない調査ですが、負担の大きさがうかがえます。

新たな報告フォーマットを課せば、現場は体裁を整える作業に時間を取られ、入力負荷が増える割に実態把握につながらないおそれがあります。

「報告のための報告」が実像を曇らせる

懸念されるのは、様式を埋めること自体が目的化することです。たとえば遅延理由の自由記述が毎回「調整中」で何が未決か分からない——予兆は数字の裏に隠れます。

必要なのは、報告項目をやみくもに増やすことではなく、既存の記録を活かして判断に必要な情報が残る運用を整えることです。集めるより、読み解く——そこが出発点です。

AIを補助線に、進捗の不可視化をほどく

本稿の筋道はこうです。既存記録を最低限整え、判断基準を複数人で定めたうえで、AIには兆候の抽出を任せ、人が根拠を検証して決める。AIが不可視化を自動で解消するわけではなく、基準の合意や最終判断は人が担います。

既存資料を横断分析し、リスクの兆候を抽出する

2026年10月時点で、プロジェクト管理にAIを活用するサービスや支援モデルが、提供開始・β版提供・取り組み開始など、異なる段階で公表されています。熟練PMの観点を再現し、報告書・課題管理表・作業分解構造(WBS)・議事録・コミュニケーション履歴を新たな報告入力なしで横断分析してリスクの兆候を示す提供開始済みのサービス[6]、成果物のレビューや論点・リスクの整理、ナレッジ管理などを支援するβ版[7]、蓄積ナレッジと生成AIを組み合わせたPMO支援モデルの取り組み[8]などです。

いずれも既存資料を活用する方向ですが、必要な資料や連携、現場の負荷はサービスごとに異なります。各社の発表に基づく機能紹介であり、導入効果を比較・実証したデータではありません。

判断観点を型にして共通の確認材料をつくる

ポイントは、複数のPMで「どこを見るか」という判断観点を型にし、AIに参照させることです。進捗・品質・リスクに加え、稼働の偏りや未解決の懸念事項の増加といった観点も含められます。観点を共通化できれば、立場でばらついた見方をすり合わせられます。観点は過去のリスク事例から定めて試行で妥当性を確かめます。特定の経験者の判断をそのまま載せると偏りを再現しかねないためです。

経験者の頭の中にある「読み解く力」を組織の資産に変える具体策は“あの人しかできない”を終わらせる脱属人化の設計でも紹介しています。

ただし前提と限界があります。課題の担当者・期限・状態や意思決定の記録など、AIが手がかりにする最低限の情報は事前にそろえます。資料が古い・記録がない・用語がばらばらでは欠落は埋まりません。出力には誤検知や見逃し、古い情報の参照も起こり得るため、機密や権限管理への配慮も要ります。監視と受け取られないよう利用目的を説明し、個人評価には使わないと決めます。AIが示すのは「確認すべき兆候」であって最終判断ではない、と線を引くことが大切です。

さいごに

プロジェクトの属人化は、ツールを入れれば自然に消えません。難しいのは、立場で異なる像をすり合わせ、既存情報から状態を読み解くことです。

いきなり全社導入は不要です。次の手順で小さく試します。

  1. 一つのプロジェクトを選ぶ。 AIで何を改善したいかを決める。
  2. 兆候を2〜3個に絞り、プロジェクトに応じて定義する。 「期限超過」は期限を過ぎ、状態が未完了の課題。「決定待ち」は会議録などで未決と確認でき、まだ結論が出ていない事項。
  3. 根拠となる記録を整える。 課題の担当者・期限・状態や意思決定の記録など、AIが参照する最低限の項目を確認する。新しい定型報告を増やさず、判断に必要な情報が既存の記録に残るよう運用を整える。
  4. AIに根拠と日付を出させ、人が元資料の該当箇所まで確かめ、たとえば週次で検証する。 的中した兆候・誤検知と、事後レビューで判明した見逃しを記録する。
  5. 事前に決めた指標で継続・修正・中止を判断する。 「兆候の記録から人が確認するまでの時間」のように測定区間を試行前にそろえ、対応不要だった警告の割合や見逃し件数も集計方法を先に定めて比べる。記録不足が原因なら、AI導入より先に記録ルールを直す。

AIに任せるのは判断ではなく、確認すべき兆候の発見——その線引きが、不可視化をほどく現実的な一歩です。自社の進捗情報がいま「誰の頭の中」にあるかを見直すところから始めてみませんか。

出典

この記事を書いた人

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m-koshihara

ソリューションサービス事業部

5年以上Webアプリ開発に従事したのち、2023年よりSGCの導入を担当。法人向け生成AI活用について、導入や業務活用の視点から発信しています。

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