1. TOP
  2. お役立ちコンテンツ
  3. お知らせの記事一覧
  4. 業務改善が空回りする理由は可視化不足|プロセスマイニング×AIの実践2026

業務改善が空回りする理由は可視化不足|プロセスマイニング×AIの実践2026

「ツールも入れた、AIも試した。なのに現場は楽になっていない」——そんな手応えのなさを抱える企業は少なくありません。改善が空回りする原因は、施策の不足ではなく、その手前にあります。直すべき場所を”事実”として掴めていないまま、手段から動き出してしまうのです。本記事では、業務改善を空回りさせる「可視化不足」の正体と、プロセスマイニング・タスクマイニングがAIと結びついて何を変えたのかを整理します。

なぜ業務改善は「空回り」するのか

施策から入ると「非効率の高速化」になる

業務改善の現場では、はじめに「RPAを入れよう」「AIで自動化しよう」と手段が決まりがちです。しかし、非効率なプロセスをそのまま自動化しても、生まれるのは「無駄を高速に繰り返す仕組み」にすぎません。七つの承認印が必要な稟議をそのまま電子化すれば、七つの承認が高速で回るだけです。

手段から入る改善は、一見すると着手が早く、成果も出ているように見えます。ところが土台となる業務設計を問い直していないため、効果は限定的なまま頭打ちになります。動いた感触はあるのに数字が動かない——この乖離こそ、空回りの典型的な症状です。

なぜ手段が先行するのでしょうか。多くの場合、「何かを導入した」という事実そのものが社内では成果として語りやすいからです。プロセスの作り直しは関係部署の調整を伴い、地味で時間もかかります。比べて、新しいツールの導入は分かりやすく、稟議も通しやすい。この通しやすさが、本来直すべき業務設計を後回しにさせてしまいます。

思い込みの現状認識という落とし穴

改善の出発点は現状把握ですが、その現状認識が曲者です。多くの場合、業務フローは「担当者の記憶」や「マニュアル上の建前」をもとに描かれます。実際の現場では、例外処理や手戻り、非公式の近道が積み重なり、図の通りには流れていません。

この思い込みのズレは、部門が増え、業務が分かれているほど見えにくくなります。日本企業のDXは社内業務の効率化に偏った「内向き・部分最適」の傾向が強く、業務プロセス最適化でも個別最適の割合が高い一方、米国・ドイツは全社最適化の割合が高いと指摘されています。部門間連携の弱さによるサイロ化も課題です[1]。部門ごとに自分の見える範囲だけを改善すると、つなぎ目に無駄が滞留し、全体では誰も得をしない構図が生まれます。

ログが描く「事実」――プロセスマイニングとタスクマイニング

プロセスマイニング:システムログから業務フローを再構成する

プロセスマイニングは、基幹システムやワークフローに残るイベントログを解析し、実際に業務がどう流れたかを再構成する手法です。誰の記憶にも頼らず、システムが記録した事実だけから、手戻り・逸脱・滞留といったボトルネックを浮かび上がらせます。「あるべき姿」ではなく「ありのままの姿」を描くのが本質です。

この領域は急速に立ち上がっています。プロセスマイニングソフトの世界市場は2023年に8億7,160万ドル[2]、2024年には11億ドルへと拡大し、前年比成長率は31.7%でした[3]。事実ベースで現状を掴む需要が、世界的に高まっていることの表れといえます。

タスクマイニング:操作の粒度で死角を埋める

プロセスマイニングがシステムをまたいだ業務全体の流れを捉えるのに対し、タスクマイニングは従業員のPC操作という細かい粒度に踏み込みます。Excelへの入力、ファイルの保存、画面間のコピー&ペースト——一つひとつの操作ログを収集し、システムには記録されない手作業の実態を可視化します。

たとえば経理の請求書処理では、システム上は「受領から支払まで数日」と見えていても、その裏で担当者が複数システムを行き来し、転記と確認に多くの時間を費やしている場合があります。タスクマイニングは、こうしたシステムの記録には残らない人手の負荷を表に引き出します。属人化していた作業が、はじめて数字として語れるようになるのです。

ただし、タスクマイニングは従業員のPC操作データを扱うため、導入時には取得対象、保存期間、閲覧権限、匿名化の方針を明確にする必要があります。改善という目的を超えて個人評価や監視に転用されれば、現場の反発やコンプライアンス上の問題を招きかねません。可視化はあくまで業務を直すための手段であり、人を測るための手段ではないという原則を、運用ルールとして明文化しておくべきです。

二つは競合ではなく補完関係にあります。プロセスマイニングで「どの工程が詰まっているか」を特定し、タスクマイニングで「その工程の中で人が何に時間を奪われているか」を掘り下げる。マクロとミクロを重ねることで、改善すべき一点が事実として像を結びます。

AIで可視化は「見える」から「示す」へ

インテリジェントな改善提案という到達点

従来の可視化は「現状が見える」ところで止まり、そこから何をどう直すかは人の解釈に委ねられていました。生成AIとの結合は、この最後の一歩を変えつつあります。膨大なログから異常なパターンや遠回りの経路を抽出し、「どこを、どのように改善すべきか」まで提示する機能も、一部のツールで登場し始めています[4]。

これは可視化の役割が「観測」から「提案」へ移ることを意味します。人は分析そのものに時間を費やす代わりに、AIが示した改善候補を評価し、意思決定に集中できます。可視化はレポートを眺めて終わる作業ではなく、次の打ち手を生み出す起点へと位置づけが変わります。

ただし、提案を鵜呑みにしてはいけません。AIが示すのはあくまでログから導いた候補であり、現場の事情や例外の妥当性まで理解しているわけではありません。なぜその回り道が生まれたのかを現場に確かめ、消すべき無駄と残すべき手当てを切り分ける——この判断は人の役割として残ります。AIは選択肢を広げる存在であって、決定を肩代わりする存在ではありません。

可視化を全体最適と自動化の前段に据える

可視化は、自動化やAI導入の「前工程」に置いてこそ効果を発揮します。実態を事実で掴み、不要な工程を削り、流れを標準化したうえで自動化する——この順序を踏むことで、はじめて非効率の高速化を避けられます。McKinseyが2020年に大企業の回答者を対象に行った調査では、自動化目標を達成している企業ほど、自動化を戦略上の優先事項に位置づけ、人材面にも注力し、全社的に展開できる運用モデルを整えている点が特徴とされています[5]。

ここで効くのが、部門の壁を越えた視点です。同じ調査で、自社は自動化目標を達成したと回答した割合は61%にとどまりました[5]。可視化を一部門の改善ツールに閉じ込めず、経営・IT・業務をつなぐ共通言語として使うことが、個別最適から全体最適へ抜け出す条件になります。

さいごに

業務改善が空回りするのは、現場の努力が足りないからでも、導入したツールが悪いからでもありません。直すべき場所を事実として掴まないまま、手段のほうから走り出してしまうからです。可視化はその順序を正す営みであり、プロセスマイニングとタスクマイニングはそれを「思い込み」から「事実」へと引き上げます。

まず取り組むべきは、自社の主要業務が「図の通りに流れている」という前提を一度疑うことです。ログという客観的な証拠から実態を描き、AIの提案を借りてボトルネックを一つ特定する。その小さな一歩が、高速化と改善を取り違えない、空回りしない改善サイクルの起点になります。

出典

この記事を書いた人

Default Author Image

Yuji Oe

ソリューションサービス事業部

10年以上の業界経験(主にデータベース分野)を生かし、現在はSmart Generative Chatの導入のプロジェクトマネジメントを中心に活動。

DXを
「一気に進める」なら
SGC

無料トライアルのご紹介

トライアル

SGCは1週間の無料トライアルをご利用いただけます。
DXの全体像を把握し導入のイメージをつかむためにも、ぜひご利用ください。

サービスに関するお問い合わせ、
資料のご請求はこちらから承っております

資料請求