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AIでコストは下がる、でも収益化は進まない|Deloitte調査が示す46%ギャップの正体と打開策

「生成AIを導入してから業務時間は確かに減った。なのに、売上や利益への貢献が見えない」——そんな声が経営層からあがる場面が増えています。これは感覚ではなく、データで裏づけられた現象です。Deloitteが2026年に公表した調査では、AIで生産性向上を達成した企業が66%であるのに対し、収益成長につながった企業はわずか20%にとどまり[1]、46ポイントというギャップが明らかになりました。本記事ではこのギャップの構造を読み解き、収益につながる打開策を整理します。

46ポイントギャップの正体を解読する

生産性向上はどこで止まっているか

Deloitteが2025年8〜9月に世界3,235名のリーダーを対象に実施した調査では、AIから得られている成果として「生産性・効率性の向上」を挙げた組織は66%に上ります[1]。会議の要約、レポートの自動生成、問い合わせ対応の効率化——これらの用途でAIは確かに機能しています。

しかし同じ調査で「AIで収益成長に結びついている」と答えた組織は20%に過ぎません[1]。さらに興味深いのは、74%の組織が「将来的にはAIで収益増を実現したい」と回答している点です。実現している20%に対し、期待する74%——この差もまた大きな断絶を示しています。

収益成長と生産性向上は別のメカニズム

この46ポイントギャップは、AIの性能の問題ではありません。「何を変えたか」の問題です。生産性向上は既存業務の処理速度を上げることで達成されます。一方、収益成長は顧客への提案内容が変わる、新しい価値を届けられる、市場への展開スピードが上がるといった、業務の「設計そのもの」が変わって初めて実現します。

Deloitteの調査では、組織を3つに分類しています。34%が「深い変革(新製品開発・コアプロセスの再設計)」に取り組み、30%が「主要プロセスの再設計」を進めているのに対し、37%は「既存プロセスへのAI追加」という表面的な利用にとどまっています[1]。この37%の層の存在が、収益成長まで届きにくい背景の一つと考えられます。

なぜAIコスト削減が収益に変わらないのか

タスク自動化と業務再設計の決定的な違い

よくある導入パターンは「ある業務の一部をAIに任せる」というものです。メールの下書き、議事録の作成、データ集計——いずれも単体では有用です。しかしこれらは「タスク自動化」であり、業務の流れそのものは変わっていません。担当者の手間が減っても、顧客へのアウトプットや提案の質は変わらないため、収益には直結しにくいのです。

McKinseyの2025年調査では、生成AIから過去12か月で5%以上のEBIT寄与があったと答えた企業は17%にとどまっています[2]。同調査はワークフロー再設計がEBITインパクトと最も強く相関する要素であると指摘しており、既存プロセスへの単純なAI追加ではなく業務プロセス全体の再設計が鍵になると強調しています。

AIアクセスがあっても使われない現実

収益につながらないもう一つの要因が、「使われていないAI」の問題です。Deloitteの調査によると、従業員のAIへのアクセスは2025年に50%向上しましたが、日常業務でAIを活用している従業員は60%未満にとどまっています[1]。ツールを提供しても、業務設計と運用体制が変わらなければ使われません。

同調査では、スキルギャップを「AI統合の最大の障壁」と認識している企業が多く、その対応策として最も多く選ばれたのは「トレーニング・教育」でした[1]。しかしトレーニングだけでは使用率は上がりにくい。業務フローの中でAIを使う場面を「設計」し、使わない選択肢が生まれにくい環境をつくることが先に必要です。

収益につながる企業と止まる企業の分岐点

収益まで届く企業がワークフロー再設計で変えること

McKinseyは、AIで大きな事業価値を実現するには、AIを既存業務に付け足すのではなく、業務プロセスそのものを再設計する必要があると指摘しています[3]。具体的には、単一タスクへのAI割り当てではなく、一連の業務プロセスをAIエージェントが担い、人は判断と例外対応に集中する構造です。

McKinseyの調査ではマーケティング・営業の事業部門レベルで収益増を報告する回答が多く[3]、コスト削減ではなく顧客向けアウトプットの質と量が変わることで収益に届いています。「速くなった」から「提供できるものが増えた」への転換です。

ガバナンスと経営関与が成果の差を生む

Deloitteの調査では、シニアリーダーがAIガバナンスに積極的に関与している企業は、技術チームに委任している企業と比べて、有意に大きなビジネス価値を達成していることが示されています[1]。ガバナンスとは規制対応だけではなく、「どの業務にどのAIをどこまで使うか」の設計判断です。これが経営層の課題として位置づけられているか否かが、成果の分岐点になっています。

投資判断、優先順位付け、成果の測定——これらを経営層が担わないまま現場への「AIツール配布」で済ませると、生産性向上は一時的なコスト削減にとどまり、収益創出には届きません。

さいごに

AIでコストが下がっているにもかかわらず収益が増えない企業の多くは、「タスクを速くする」段階で止まっています。Deloitteのデータが示す46ポイントギャップは、「AIの限界」ではなく「設計の問題」です[1]。

この壁を超えるために必要なのは、新しいAIツールの追加ではありません。業務の流れを「どう変えるか」を経営課題として定義し、AIが価値を届ける仕組みとして設計し直すことです。McKinseyが指摘する業務変革先行企業が着手しているのはまさにそこであり、社内AI活用の投資対効果を問い直す今がその出発点です[3]。

出典

この記事を書いた人

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Yuji Oe

ソリューションサービス事業部

10年以上の業界経験(主にデータベース分野)を生かし、現在はSmart Generative Chatの導入のプロジェクトマネジメントを中心に活動。

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