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OpenAI『音声デバイス』2027年発売|Jony Ive設計・65億ドル投資で始まるスマホ終焉と『Gumdrop』全貌

iPhoneを生み出したデザイナーが、今度はiPhoneを「終わらせる」デバイスを作ろうとしています。2025年5月、OpenAIはAppleの元チーフデザイナーJony Ive氏が創設したio Products社を65億ドルで買収すると発表しました[1]。

この巨額投資が目指すのは、単なる新製品の開発ではありません。人間とテクノロジーの関係性そのものを再定義する「第四のインターフェース」の創造です。スマートフォンが私たちの注意を奪い続ける現状に対し、Ive氏は「過ちを正す」と語っています[2]。

本記事では、このプロジェクトがなぜ「スマホ終焉」につながるのか、その本質を解き明かします。

iPhone創造者による「贖罪」のプロジェクト

65億ドルが示す本気度

OpenAIによるio Products買収は、ベンチャー支援企業による買収としてはかなり大規模なものとなりました[1]。注目すべきは、この買収が全額株式で行われ、Jony Ive氏とLoveFromは独立企業体として存続しながら「OpenAI全体にわたる深いデザインおよびクリエイティブ責任」を担う点です[3]。さらにSoftBankグループは2025年にOpenAIへ総額410億ドルを投資し、約11%の株式を取得しました[4][5]。この投資規模は、単なる新しいガジェット開発への期待を超えた、産業構造の転換への賭けを意味しています。

Sam Altman氏は公式声明で「AIは信じられない技術だが、優れたツールには技術、デザイン、そして人間と世界への理解の交差点での仕事が必要だ」と述べ、それを実現できるのはIve氏のチームだけだと断言しました[6]。一方、Ive氏は「過去30年間で学んだすべてのことが、この瞬間に導いてくれたという感覚が強まっている」と語っています[6]。この発言には、iPhone創造という栄光と、それがもたらした副作用への深い内省が込められています。

「過ちを正す」というIveの決意

Ive氏は2025年のStripe Sessionsで、技術産業における自らの責任について率直に語りました。「意図において無実であっても、悪い結果をもたらすものに関わっていれば、それを引き受ける必要がある」という彼の言葉は、スマートフォン依存症という社会問題への真摯な向き合いを示しています[7]。彼はこのプロジェクトを「過去のコンシューマーガジェットの過ちを正す機会」と位置づけ、デバイス依存症に対処するためにオーディオファーストの設計原則を優先しているのです[8]。

Altman氏は現在のデバイス体験を「ニューヨークのタイムズスクエアを歩いているような感覚」と表現しました[9]。点滅するライト、あちこちに向かう注意、鳴り響く音—これらすべてが人々を不安にさせています。対照的に、新デバイスは「湖畔の小屋のような平和の感覚」を呼び起こすものとして設計されています[9]。この「Times Square」から「湖畔の小屋」への転換こそが、注意経済からの解放を象徴しています。

なぜ今、音声デバイスが「スマホを終わらせる」のか

320ms応答遅延という技術的転換点

2024年5月に発表されたGPT-4oは、平均320ミリ秒という応答遅延を実現しました[10]。これは人間の会話反応時間である約230ミリ秒に近接した数値であり、従来のChatGPT Voiceの2.8秒から10倍以上の高速化を達成しています[10]。この技術的ブレークスルーの本質は、単なる速度向上ではありません。従来の音声アシスタントは音声認識(STT)、言語モデル(LLM)、音声合成(TTS)という3段階のパイプライン処理を必要としましたが、GPT-4oはすべてのモダリティを組み合わせた単一モデルで処理します[11]。

この変革により、トーン、感情、複数話者といった非言語要素が失われることなく処理されるようになりました[11]。AlexaやSiriが「岩のように愚か」と評される一方で[12]、GPT-4oは真の会話的AIを実現しています。実際、Amazonは2017年から2021年にかけてAlexa部門で250億ドル以上の累積損失を計上し[13]、数千人規模のレイオフを実施しました[14]。旧世代の音声アシスタントが技術的限界に達した今、GPT-4oの登場は音声ファーストデバイスの実現可能性を根本的に変えたのです。

「代替」ではなく「解放」という戦略

2024年、Humane AI PinとRabbit R1という2つの音声AIデバイスが華々しくデビューしましたが、両者とも市場で惨敗しました。Humane AI Pinは収益約900万ドルに対し返品100万ドルを記録し製造中止に、Rabbit R1の日次アクティブユーザーはわずか5,000人でした[15]。彼らの失敗の核心は、スマートフォンの「代替」を試みたことにあります。スマホが既にすべてをより良くこなしていたのです[16]。

対照的に、OpenAI・Iveのアプローチは根本的に異なります。The Informationによると、Ive氏はこのデバイスをスマートフォンの代替としてではなく、ラップトップとスマートフォンに並ぶ「第三のコアデバイス」として位置づけています[17]。このデバイスの価値は機能の網羅性ではなく、「注意を要求しない」体験にあるのです。Altman氏は「人々がそれを見たとき、『これだけ?』と言ってほしい。非常にシンプルだが、ただ『機能する』」と述べています[18]。

市場データもこの戦略を後押ししています。スマートフォン市場は2024年に12.4億台を出荷したものの、成長率は年1〜2%に鈍化すると予想されています[19]。一方、スマートグラス市場は2024年に前年比210%成長を記録し[20]、音声アシスタント市場は2033年までに599億ドルに達すると予測されています[21]。さらにZ世代の77%が「オンライン時間を過度に費やしている」と認識し、72%がスクリーンタイム削減を「非常に重要」と回答しています[22][23]。消費者は既に、スマホからの「解放」を求めているのです。

2027年に何が起きるのか

通称「Gumdrop」が目指す体験

2025年11月、Ive氏はサンフランシスコのEmerson Collective Demo Dayで「2年以内に発表する」と明言しました[24]。サプライチェーン情報筋によると、プロジェクトの内部コードネームは「Gumdrop」で、ペン型のフォームファクターを採用し、スクリーンレス・オーディオファーストの設計となるとされています[25][26](コードネームは確定しておりませんが、本稿ではGumdropで統一します)。また手書きテキスト変換、音声会話、他デバイス連携といった機能が予定されています[27]。

重要なのは、このデバイスが「第四のインターフェース」として何を実現しようとしているかです。Ive氏は計算機史上の重要なモダリティを、コマンドライン、GUI、マルチタッチと整理し、AIハードウェアが「第四のモダリティ」を導入できると考えています[28]。これは1990年代にMark Weiserが提唱した「ユビキタスコンピューティング」の概念と一致します[28]。テクノロジーが必要なときだけ現れ、不要なときは背景に消える—この「アンビエントコンピューティング」の理想が、ようやく実現可能になったのです。

競合との差別化ポイント

競合他社も音声・ウェアラブル市場に注力しています。Metaは2023年以降Ray-Ban Metaスマートグラスで200万台以上を販売し、グローバル市場シェア約60%を獲得しました[29]。Googleも2026年にAI搭載スマートグラスを発売し、Android XRという新OSを展開する計画です[31][32]。

しかし、OpenAI・Iveのプロジェクトには明確な差別化要素があります。第一に、GPT-4oの圧倒的な会話能力です。MetaやGoogleの音声AIは依然として従来型パイプライン処理に依存していますが、GPT-4oは単一エンドツーエンドモデルで320msの応答を実現しています[10][11]。第二に、Ive氏の「人間の喜びと平和」を最優先する設計哲学です[33]。彼は「バレーや私たちの業界では、人間の喜びが欠けている」と警告し、技術的優位性よりも人間体験を重視しています[33]。

さいごに

スマートフォンの「終焉」とは、デバイスの消滅ではなく、注意経済というパラダイムの終焉を意味します。Jony Ive氏が30年のキャリアで追求してきた「複雑さに秩序をもたらす」という哲学は、iPhoneという「注意を奪うデバイス」の創造に結実しました。そして今、彼はその「過ちを正す」ために、注意を「要求しない」デバイスを創ろうとしています。

320ms応答遅延という技術的ブレークスルーは、人間的な会話体験を初めて可能にしました。スクリーンを見つめる必要のない、環境に溶け込むAIインターフェースが現実のものとなりつつあります。2027年、私たちは「Times Square」から「湖畔の小屋」へ—つまり、絶え間ない注意の要求から、平和で穏やかなテクノロジー体験へと移行する転換点を迎えるかもしれません。この変革の波に、あなたのビジネスはどう対応しますか。

出典

この記事を書いた人

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Yuji Oe

ソリューションサービス事業部

10年以上の業界経験(主にデータベース分野)を生かし、現在はSmart Generative Chatの導入のプロジェクトマネジメントを中心に活動。

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